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「ビックリしたー」
私はホッと胸を撫で下ろした。ハァッと息を吐いた。
中途半端に開いている三面鏡をきっちりと閉めようとする。三面鏡の両開きの鏡に手をかける。
けどその手は、途中で止まった。僅かに開いた三面鏡の扉を持って、止まった。
私はゆっくりと、中途半端に閉まる三面鏡の鏡を開ける。
閉めるのではなく、開ける。中を見ようとする。三面鏡に映る鏡の奥を覗こうとする。
好奇心。怖いもの見たさ。
いなくなった朋美。
もしかして、鏡の中に……?
そんな馬鹿げた好奇心に負けて、私は三面鏡を開いた。
もしかすると、朋美が映ってたりして。そんなくだらない事を考えながら。
キィィっと、木材の軋む音がする。思った以上にうるさい。
ゆっくりと、私はそれを両開きにする。
「朋美……?」
その鏡に映っていたのは朋美……ではなかった。
私だった。当たり前みたいに、私が映っていた。私がずらりと沢山映る。鏡が鏡を映し、それが数え切れないほど多くの私を映し出す。
心臓が大きく鼓動を打つ。手汗が出てくる。
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