仏師

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 数日後の事。  丈史を迎えに行くと、保母から言われた。他の保母が丈史の相手をして、丈史のいない場所でその会話はなされた。 「丈史ちゃんのお友達で、近所に七歳か八歳くらいの女の子はいませんか? もしかしたらもう少し上かも知れませんが……」 「いや……。いませんけど。何故です?」 「丈史ちゃんも怖がってて、ちゃんとお話ししてくれないんですけど、大人からいじめられてる女の子がいるって……」  思わず眉根を寄せた。 「それって、……まさか、虐待児童?」  保母もいっそう声を低めた。 「と、思うんですけど……。訊いても教えてくれなくて……」 「わかりました。僕から訊いてみましょう」 「お願いします。ただ、丈史ちゃんも怯えてますから慎重に……」 「はい……」  排他的で余所者に冷たい地域性、住民のよそよそしい態度、何かしら陰湿なものを感じていた。女の子の姿を見た事はないが、ありえない事ではない。もしも虐待児童なら閉じ込められているのかも知れない。  いや。  そもそも、丈史とその子の接点は何処にあった?  保育園にいる以外の殆どの時間は、俺と過ごしている――。  ハンドルを握りながら、武雄はどう切り出したものか考えあぐねていた。  口を開いたのは丈史のほうだった。信号待ちの交差点。唐突に訊かれた。 「ねえ、パパ……。パパは幽霊っていると思う?」 「え?」  武雄は思わず顔を助手席に向けた。  丈史も、つぶらな瞳を真っ直ぐ父親に向けていた。  これは、どういう事か? 先日は死後の事を訊いてきて、今日は幽霊?  何がこの子の心を捉えている――? 「そんなのは……、いないよ。こないだ話したじゃないか。みんな天国に行くんだよ」  丈史は首をふった。大粒の涙がぽろぽろと零れた。 「いるよ。お願い。あの子は行けないの。お顔に針が沢山刺さってた。抜いてあげて」
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