訪問者

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訪問者

 チャイムの音に呼ばれて玄関のドアを開けると、そこに従兄弟が立っていた。 「久しぶり」 「おー、久しぶり」  同じ年の従兄弟は、家も近所で子供の頃から仲がよく、高校までは同じ学校に通っていた。でもさすがに大学は別々になり、お互い地元を離れてからは、連絡こそ取り合ってはいたが、顔を合わせる機会はなくなっていた。  そんな相手の不意の訪問に驚きはしたが、会えて嬉しい気持ちの方が強く、すぐに家に招き入れ、それぞれの近況を語り合った。  なんやかんやと話が弾み、気づけば日が暮れていた。明日の予定をいたら特にないということだったので、今日はこのまま泊まってもらい、酒でも飲みながら夜通し語ろうということになった。  ビールを取りにキッチンへ向かう。この間買ったままの六缶入りがちょうど冷えているから、後何かツマミを…と、食材を漁りかけた瞬間、携帯が鳴った。  ディスプレイを見ると母親だった。電話なんて滅多にかけてこないのに何だろう。  電話に出るなり、けたたましい声が溢れた。  酷く取り乱していて何を言っていのか判らない。ただ時折、従兄弟の名前が聞こえる。  落ち着いてと、何度も母親を宥めながら話を聞くと、やっと意味の通じる言葉が聞こえてきた。 「さっき連絡があってね、アンタの従兄弟の〇×くんが、交通事故で亡くなったって…」  それを耳にした時、俺は、母親は何の冗談を言つていのだろうと思った。  だってあいつならウチに来ている。それも昼からずっとだ。 「事故って、何かの間違…」 「お昼頃に車にはねられて、そこからずっと意識不明だったっていうの。それで、さっき、息を引き取ったって…」  俺の言葉を遮って母親が語る。その声話調子に嘘は感じられない。
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