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何がどうなってるんだ? だってあいつは昼からずっとウチに…。
「……ちゃん」
ふいに扉の向こうから声がした。
俺を呼ぶ従兄弟の声。さっきまであんなに喋っていたのに、何故か全然声色が違って聞こえる。
「何か話声するけど、電話?」
「あ、ああ。母さんから」
「おばさんから? どんな用件?」
つい素直に通話相手を口走った。それに反応した従兄弟がそう問うてくる。
「……ちゃん。おばさん、何て? 俺のこと、何て言ってるの?」
扉越しに静かな問いが向けられる。その声音はもう、さっきまで喋っていた従兄弟のそれじゃない。もっと静かでもっと冷たくて…この世の者の声とは思えない。
「……ちゃん。答えてよ。……ちゃん」
繰り返される質問と呼び名。
扉一枚隔てた形で行われる一方的なやりとり。この時間が終わるのはいつだろう。
朝が来たら終わるのか? それとも別の形で終わるのか? 終わってくれるのか? それまで俺は無事でいられるのか?
自問自答の答えは出ない。そして。
「答えてよ、……ちゃん」
その問いへの答えも決して返すことはできない。
訪問者…完
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