一つ屋根の下

2/10
前へ
/93ページ
次へ
高台にある閑静な住宅街。 皆が少し遅く起きる休日の早朝。 まだ、空気は肌寒い。 人通りも少ない道を1人の青年が走っていた。 彼の名前はランディ。 高校3年生。 今は、日課となっている、家から公園までのジョギング中だ。 その途中で近所の家の犬を連れて(朝の散歩だけ頼まれている)公園でフリスビーをしたり、老夫婦と話をしたり、ランディを真似してジョギングを始めた子供達の相手をしたり。 その間も常に笑顔を絶やさない。 すぐ下の弟いわく、 「無駄に爽やかヤロー」 それが、ランディなのである。 「ランディ兄ちゃん!まったね~ぇ」 「ああ!気をつけてな」 家の近くの十字路で子供達と別れる。 そのまま、家まで走ろうとすると、家の前に見慣れた髪色をした青年がいるのを見つけた。 「あ」 相手もこちらに気がついたのか、右手を上げた。 「おはようございます。オスカー兄さん。…また、朝帰りですか?」 「また、とはなんだ。またとは。仕方ないだろう?レディ達が離してくれなくてな」 彼はオスカー。 ランディの4つ上の兄である。大学4年生。 「昨日は…」 「全国大会の打ち上げだ。他の連中が羽目を外して飲み過ぎるから…」 大変だったぜ…。 オスカーは大学でフェンシング部に所属しており、今年最後の大会で彼は個人戦で優勝している。 「まぁ、今からは就職だの何だので忙しくなってくるからな。今のうちに騒いでおきたいというのもあったんだが」 苦笑しながら、オスカーは言う。 「坊やも今年受験だろう?」 「そうですけど…。それより、坊やって言わないで下さい!」 「これくらいで怒ってるようじゃ、まだまだ坊やだな」 言葉に詰まったランディを置いて、家に入っていく。はっと、我に帰ったランディも急いで家に入っていった。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加