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家に帰ってみると、もうすでに誰かは起きているようだった。
ダイニングに人のいる気配がした。
オスカーは2階へ、ランディはダイニングへの扉を開けた。
「おはようございます。リュミエール兄さん」
「おはよう。ランディ。良い朝ですね」
リュミエールは六男に当たる。
たおやかに微笑むその姿は、彼のすぐ上のオスカーともう一人の兄とは全く違うタイプだ。
美大に通っている。絵の才能は中々のもので、賞も何度か取っている。さらには、この家の家事の殆どを彼が賄っている。
「もうすぐ朝食ができあがりますよ」
「じゃあ、俺先にシャワー入ってきます」
そのままダイニングを出ようとすると、調度、入って来た、マルセルとぶつかってしまった。
「あっごめん、マルセル。大丈夫かい?」
「おはよう!ランディ。大丈夫だよ」
マルセルはこの家の末っ子にあたる。かわいらしい容姿のせいか、よく女の子に間違えられてしまう。
「あっ、ねぇ、ゼフェル知らない?」
「ゼフェル?いいや、今日はまだ見てないけど」
「僕が起きた時既に、居なかったんだ。珍しいよね」
いつも寝坊するのに。
「あいつの場合、休日関係なく寝坊するけどな」
「僕が寝るときにはいたから。…もしかしたら、また」
その言葉にランディの顔が曇るのをマルセルは見逃さなかった。
「でも、最近落ち着いただろ?大丈夫さ。……多分」
何となく重い空気が流れ始めたその時。
「ほらほら、そんな所で固まらないよ~」
不意にマルセルの後ろから声がした。
振り向けばそこにいたのは、朝からなんとも派手な青年が立っていた。
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