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フロアに戻ると手隙のスタッフ数人が「聞いた?」と寄って来る。
「聞いた。岡は移動になるんだって?」
「そうそう。あと、お前も、って。」
「は?俺ぇ?…そんなこと言われなかったケド?」
と云うより、先に断っちゃったカモですけど。
「あれ、そうなん?
この店から二人は連れて行くみたいな話だったから、ってっきり」
「もしかして様子見ながら言うつもりなんじゃねー?」
「えー…困る。県外とかマジ無理。」
「まぁなぁ。」
「でも渉っていま実家だろ?」
「だから?」
「一人暮らしするいいキッカケになるンじゃないか?」
「えぇ~無理。俺、料理とかしたことねーもん」
「米さえ炊ければ問題ないぜ。」
「・・・炊いたこと、ない。」
「マジかお前、その歳で!?」
「それは…本気で無理なやつだな。」
謎に同情され、言い返そうとしたら
「いらっしゃいませ~」
二人連れの予約客が来店して、この話題は立消えになった。
慌てて持ち場に戻り、鏡の前で仕事モードに切り替える。
「いらっしゃいませ。本日はカットを担当させて頂きます加賀屋です。」
常連の連れて来た友人だという新規客にカタログを渡す。
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