かわいそうがり

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しかしまァ、そうはいっても。 「あのさ、俺、お前のことは可哀相とかおもってないからな?」 「なんで?こんなにカワイソーなのに」 「どっこが!」 むしろ「触り合いっこ」から進展しなくてモヤモヤしてますけど? 真希が突撃してきた“アレ”から、またの機会は遠のいているというのに。 「たとえば、もし今の時点で俺が事故とか事件で死んだとしたら、『元会社員の職業不詳の独身男性(26)』になるじゃん。」 「は?こんなに働いてるのにかよ?」 「元会社の外部契約も切っちゃったからなァ、いまは名無しのユーレーだよ。」 拭き終えた食器を片付ける拓を追ってグルッと台所を一周し、ベッドの前の定位置に戻る。 「雑誌の記事書いたり、コラム?ってーの?ああいうのもそっちゅうやってんじゃん。」 「単発は、ソコソコな。でも安定はしてねーし、名前が出るワケでもないから誰でも書ける散文扱い。」 「えー…なにそれ。そういうもん?」 「それでも食っていけるから、まァいいんだけど。」 興味を持って隣に座り、話を聞いていけばゴーストライターまがいなこともしているらしい。
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