529人が本棚に入れています
本棚に追加
しかしまァ、そうはいっても。
「あのさ、俺、お前のことは可哀相とかおもってないからな?」
「なんで?こんなにカワイソーなのに」
「どっこが!」
むしろ「触り合いっこ」から進展しなくてモヤモヤしてますけど?
真希が突撃してきた“アレ”から、またの機会は遠のいているというのに。
「たとえば、もし今の時点で俺が事故とか事件で死んだとしたら、『元会社員の職業不詳の独身男性(26)』になるじゃん。」
「は?こんなに働いてるのにかよ?」
「元会社の外部契約も切っちゃったからなァ、いまは名無しのユーレーだよ。」
拭き終えた食器を片付ける拓を追ってグルッと台所を一周し、ベッドの前の定位置に戻る。
「雑誌の記事書いたり、コラム?ってーの?ああいうのもそっちゅうやってんじゃん。」
「単発は、ソコソコな。でも安定はしてねーし、名前が出るワケでもないから誰でも書ける散文扱い。」
「えー…なにそれ。そういうもん?」
「それでも食っていけるから、まァいいんだけど。」
興味を持って隣に座り、話を聞いていけばゴーストライターまがいなこともしているらしい。
最初のコメントを投稿しよう!