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駐車場に停車した車の中、
後部座席で身を隠していた真希が起き上がる。
のを、バックミラーで見ていた。
「…で、なに?」
彼女のためでなく自分の為に人気のないこの場所を選んだ俺の声は、とても冷めていた。
「拓也に…フラれた…」
「知ってる。」
また、沈黙。
車内の落ち込む空気の外では幸せそうなカップルが寄り添っているのを横目に、大嫌いな泥みたいな空間に耐えた。
真希が、何か言うまでは何も俺からは言わない。
それが礼儀で、マウンティングの証だと俺は知っている。
(ってゆーか、久々だな。こういう修羅場な空気。)
「…ぅっ」
「なんで泣いてンの?」
「だって…っ!」
バックミラーに映る彼女を、可哀相とは思わない自分。
(なんだろ…すごく、冷静だ。)
「そんなに泣くくらいなら、最初から拓のこと裏切らなきゃよかったのに。」
そう言った瞬間
ミラー越しの背後で、彼女は俺を睨んだ。
鏡の中で目が合う。
俺も、目を逸らさなかった。
「まだ、拓と仲良くしてる俺がオカシイっておもう?」
鼻で笑った。
、
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