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綺麗な幕引きなんかもしたくなかった。
理想的な、
お互いに納得しての終わりなんて、実際は後引くものだって。
(このまま気不味さを引き摺ってしまったほうがいい。)
俺との想い出が真希の中で美化されたくない。
そのまま延長で…拓のことも。
非力な女の一撃でも不意討ちだったせいで赤くなっていく頬を押さえながら、俺は黙ってハンドルを握った。
「どこ、行くの…?」
「送る。」
「まだ、話おわってないじゃんっ!」
バックで進む車の中で、真希はまた俺の腕に取りすがってきた。
「あぶなっ!お前、何考えてんの!?」
当然、怒鳴る。
いくらなんでも急ブレーキを踏む事になればイラっとした。
「だ、だって!」
「だってじゃねーよ!危ないだろっ!」
「…ごめん」
「シートベルト締めろよ。」
何も言わさないぞ、な雰囲気で声を出す。
黙って大人しくなった真希を助手席に乗せたまま、車は国道を走った。
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