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「そう、ライブが近いのに、曲まで・・」 洋館からピアノの音がしてきた。 「ん?そう、この曲なんだけどさぁ・・。あいつ、作り始めの時はすごくいい感じで進んでたんだ~。なんか、インスピレーションの湧くピアノを借りることができた!って、うれしそうに話してて。ところが最近は、そのピアノの話を全くしなくなったと思ったら、曲作りまで煮詰まっちゃってるみたいで・・」 「そうなんだぁ、また借りたらいいのに。ピアノ」 「う~ん、まぁ、借りようと思えば借りれないこともないと思うんだけどね~」 「え?」 「ところであの美人の、あかねさんは?元気?」 「うん。あかねさんて、本当に美人でしょ?」 「うん。うちのライブハウスの連中にも、あかねさんのファン多いんだぜ。結構うわさの美女。しかも、ものすごい才女なんだって?」 「そうよ~。うちのあかねさんは、まさに才色兼備なスーパーウーマンなんだから。 なんか最近は、一段と綺麗になった感じなんだよねぇ~。大学とかフランス大使館からの通訳の仕事も多くて外出も多いんだ~」 「それでいて独身。ねらってる男は多いと見た!」 「そういう祐二さんも?」 「俺はそういう対象としてみてないよ。自立して自分の道を進んでいる人としてリスペクトしてる。ところで、月末のライブ来るだろう?気合入ってっから楽しみにしててよ!」 「うん、じゃぁね!」 「あ、で・・、モーニングいつから再開するの?」 「う~ん、まだちょっとわかんないなぁ~。あかねさん最近忙しくて一日顔見ないこともあるくらい。まぁ、店はそれほど忙しくないから全然大丈夫なんだけどね」 「そっかぁ~。やれやれ、当分徹夜の亮の鬼練習から逃れられそうにないなぁ~」 「え?」 「いや、こっちの話!また、昼飯食べに行くよ!じゃぁ!」 祐二は多少フラフラしながら洋館に入って行った。 洋館のグランドピアノから流れていた美しい旋律がピタリと止むと、数秒後「ババーン」と鍵盤が一斉に鳴った。
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