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部屋の入口から祐二が覗き込むと、鍵盤に突っ伏している亮の姿があった。
「おい亮、昨日は俺と違ってほとんど寝てねーんだろう。少し横んなれよ」
「・・・」
祐二は、亮の座っているピアノの椅子の少し空いてるスペースに一緒に腰を下ろした。
「あかねさんとこ、当分朝はやらないみたいだぞ」
「・・・」
「外出も多いみたいで、店にはほとんどいないみたいだし。キーちゃんに言って、ピアノ、貸してもらえるように頼んでみたらどうだ?」
「・・・」
「あのピアノなんだろう?前、昼飯食べに行ったとき、あのカフェのアンティークピアノ見てピンときたよ。そうだろう?」
「・・・」
「あの日・・ほら、俺がおまえに朝電話して、おまえがバイト先で泊まったことにしたあの日。
あかねさんと一緒だったんだろ?」
「・・・」
「何年おまえと付き合ってると思ってんだ?あの前日、おまえの居場所探すために、大学の連中に電話してたら、おまえの車にあかねさんが乗るの見たってやつがいてさ。そしたら案の定、電話のおまえの話し声が弾んでて。・・なのに帰ってきたときはまるで落ち込んでてよ~」
「・・・」
「で、次の日から鬼のように練習三昧。朝帰るとき、いつもあの店が開いてるかどうか気にしてることも、俺にはバレバレだぞ」
「・・うるせぇ」
「好きなんだな」
「・・・」
「長年おまえの彼女は見てきたけど、おまえから好きになるケースは記憶にないよ。おまえはモテるからなぁ~。それに、恋愛で落ち込む姿、俺初めて見るよ。けっこう新鮮」
「だまらないと、その口へし折るぞ」
「へし折るくらいのファイトがあるならうれしいよ。親友として」
「・・・」
「フラれたのか?」
「わからない」
「なんだよそれ」
「付き合うのは待ってくれって。返事待ち・・」
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