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「ふ~、さすがだなぁ~。おばぁさま、、いや、渡辺貿易の会長ともなると、政財界のおえらさんがたも皆挨拶に来る。すごいよ。まったく」
少し離れたところからその様子を見て祐二が言った。
亮はその言葉には答えず、会場内をぼんやり見ていた。
マダムは二人を手招きした。
「亮さん、祐二さん、こちらへ。紹介します。孫の亮、そしてお友達の祐二さんです」
「はじめまして、亮です」
「おお、君が亮くんか。噂はかねがね聞いていたよ。成績もトップで、ものすごいハンサムだと。しかし、噂以上だね!ああ、今はイケメンって言うのかな?」
「会長もご安心ですね。こんな立派な3代目がいて。うらやましい限りです」
「会長、楽しみですね!」
マダムは「そうですね」と笑いながら相づちを打った。
亮はただ、微笑んでその場の雰囲気に合わせた。
挨拶から戻った亮を、祐二はちょっといたずらっぽい目で見た。
「なんだよ」
「ふふ~ん。いや~、べつに~」
「ふー。何か言いたそうだぞ。祐二」
「まぁ~・・。頑張ってください三代目!って感じかな」
「なんだよ~」
「いや~だから、がんばれと。エールを」
わざと意味を含んだように言う祐二の言葉に、亮は呆れ半分で笑った。
ステージにデザイナーが現れた。
40代のまだ若い男性だった。
会場から拍手が沸いた。
今日の素晴らしいコレクションの主役。世界的デザイナーのフィリップ・ベルナールのスピーチに招待客の誰もが集中しているはずだった。
約2名を除いては。
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