8/8

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
「ふ~、さすがだなぁ~。おばぁさま、、いや、渡辺貿易の会長ともなると、政財界のおえらさんがたも皆挨拶に来る。すごいよ。まったく」 少し離れたところからその様子を見て祐二が言った。 亮はその言葉には答えず、会場内をぼんやり見ていた。 マダムは二人を手招きした。 「亮さん、祐二さん、こちらへ。紹介します。孫の亮、そしてお友達の祐二さんです」 「はじめまして、亮です」 「おお、君が亮くんか。噂はかねがね聞いていたよ。成績もトップで、ものすごいハンサムだと。しかし、噂以上だね!ああ、今はイケメンって言うのかな?」 「会長もご安心ですね。こんな立派な3代目がいて。うらやましい限りです」 「会長、楽しみですね!」 マダムは「そうですね」と笑いながら相づちを打った。 亮はただ、微笑んでその場の雰囲気に合わせた。 挨拶から戻った亮を、祐二はちょっといたずらっぽい目で見た。 「なんだよ」 「ふふ~ん。いや~、べつに~」 「ふー。何か言いたそうだぞ。祐二」 「まぁ~・・。頑張ってください三代目!って感じかな」 「なんだよ~」 「いや~だから、がんばれと。エールを」 わざと意味を含んだように言う祐二の言葉に、亮は呆れ半分で笑った。 ステージにデザイナーが現れた。 40代のまだ若い男性だった。 会場から拍手が沸いた。 今日の素晴らしいコレクションの主役。世界的デザイナーのフィリップ・ベルナールのスピーチに招待客の誰もが集中しているはずだった。 約2名を除いては。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加