十一

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「皆様、本日は私のコレクションにお越しいただきありがとうございます。 日本でこのように盛大なショーを行うことができ、大変光栄です」 「今日のコレクションはいかがでしたか?気に入っていただけましたか?」 「これからも多くの方々に喜ばれるデザインを発表していきます」 フランスの世界的デザイナーであるフィリップ氏は、笑顔で語った。 客席からは今日のショーの成功をたたえる大きな拍手が沸いた。 亮と祐二はフィリップの隣に立つ女性の姿にくぎ付けだった。 フィリップがデザインしたシックで品のあるブルーのドレスに身を包み、彼の言葉を次々と日本語に訳している女性。あかねだった。 “カフェ・ド あかね”にいるときとはまるで別人だ。普段は化粧っけもなく、ジーンズ姿がメインの彼女。もちろんそれでも十分に美しいのだが、今ステージにいるあかねは、髪をアップにし、化粧も華やかな感じに仕上げている。それでいて、とても上品。背が高く、スタイルもいい。まるで女優かモデルだ。 挨拶が終わり、フィリップとあかねはステージを下りると、招いた客たちと次々にあいさつを交わしはじめた 「おい、亮。あかねさん、、驚いたなぁ。元々きれいな人だとは思ってたけど、ここまでとは!今日見たどのモデルよりもきれいだぜ」 「・・・」 「おい、亮!聞いてるのか?」 「・・・」 「まぁ、あかねさんなの?通訳の仕事もされてるのね。なんて美しいのかしら。 さぁ、あいさつに行きましょう」 マダムは、亮と祐二についてくるように目配せすると、フィリップとあかねのところへ行った。マダムと祐二に一歩遅れて亮も続いた。 「ボンソワール フィリップ」
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