十一

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「いや」 「まさか、亮くんがあそこにいるとは思わなかったわ。驚いちゃった」 「驚いたのは僕ですよ。まったく。外国人の痴話喧嘩かと思ったら、いきなり聞き覚えのある声がするから。見たら、あかねさんなんだもん」 「まったく」 あかねは困ったような顔をした。 「でも、ちょっと安心しました。キーちゃんが登場したら“お断り”なんでしょ? 幸い、僕のところにキーちゃんは彼氏役で登場してないから、まだ可能性あるってことですよね?」 「それは・・」 「ははっ、そうだ。可能性あるってことだ。うん!」 亮は嬉しそうに言った。 「亮くん」 「僕、希望を捨てずにけな気に待ってるんですよ。あかねさんの答え。偉いでしょ」 「・・・」 「朝・・モーニングしなくなったのは、僕のせい?気まずかった?」 「・・・」 「僕、あかねさんを困らせてる?」 「・・・」 「あかねさん、ちょっと携帯かして」 そろそろ“カフェ・ド あかね”に着くタイミングで亮が言った。 「なぜ?」 「いいから」 店の前に着き、あかねから携帯を受け取ると、亮はなにやら文字を打ち始めた。 すると、亮の携帯電話にメールが届き、次に電話のベルが鳴った。 自分の電話の表示を確認すると、亮はあかねに携帯を返した。 「あかねさんが答えたくなった時、いつでも連絡して。俺、待ってるから」 「亮くん」 「今日はお疲れ様でした。じゃぁ」 「ありがとう」 あかねは車を降りた。 亮は運転席から手を振り、車を走らせた。
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