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「射手(いて)ちゃんはこういう話好きよね?」
早乙女が擁護を求めたのは、まだ19歳の女子大生、射手ちゃん。大人しい子だが、演技に対するこだわりが強く、少々理屈っぽい。
話を振られた射手ちゃんは即座に「はい、あります」と言った。しかし、ミーハーな女子特有のというよりは、12年に1度という仕組みに興味があるようだ。射手ちゃんの彼氏、獅子神(ししがみ)くんも横から混ざり込んだ。
「12年後って、俺たちなにしてんのかな」
「そりゃあ脚本考えたり、演出について話し合ったりしてるよ」
やけに自信満々に水瓶が言った。否定的だったのは、牡羊(おひつじ)さんと秤(はかり)さん。牛尾(うしお)さんはなにも言わず、双馬(そうま)はこの頃仕事が忙しく、ほぼ幽霊部員という状態だった。蟹江と平魚、通称水族館コンビは話すら聞いていなかった。
「12年ですよ? 12年!」
冗談でしょ、という秤さんに、水瓶はタバコを灰皿に押し付け、残りの煙を吐いた。
「12年なんてクソくらえだね。12年後も俺は好きな演劇をやるし、好きなスターズバックコーヒーを吸うよ。これは普通のコーヒーの味と違うんだ。ちゃんと俺の好みをわかってる」
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