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竜は何故この子が泣いているのか分からなかった。
女の子が立ち上がり、ゆっくりとドアを開ける・・・。そこから、村田、涼、麗香・・・。・・・そして春奈が・・・。竜は驚いて、
「え?なんで?みんな・・・。」
言葉に詰まった。涼が春奈の背中を押した。竜は顔をくしゃくしゃにして泣いている春奈を見て、
「春奈・・・?」
奥野春奈がビクッと体を震わせながら見ていた・・・。「私じゃない・・・。」
そして背中を押された春奈が竜の胸に飛び込んでみんな きた。
「春奈・・・。」
竜がもう一度つぶやく。
春奈が顔を上げて竜の目を覗き込む・・・。そして・・・、
「映っているのね・・・。竜の目に私はちゃんと映っているのね・・・。」
竜の唇に唇を重ねた・・・。竜は驚きながらも受け入れた。竜は春奈をきつく抱きしめた。
「俺、春奈が好きだ。ずっとずっと好きだった・・・。もう、離したくない。」
今度は竜の方から春奈にキスをした。涼が、
「あの~・・・。俺たちも居るんだけどなぁ・・・。」
皆は一斉に笑った。
・・・奥野春奈以外は・・・。
そして、退院できる日がやって来た。奥野春奈が竜に向かって、
「竜君は、遠い存在の人になっちゃうんだね・・・。私、本当に幸せだった。ありがとう・・・。一生忘れない・・・。」
竜のほほにキスをした。
「今度は私の事わすれないでね・・・。」
涙を必死にこらえながら笑顔で言った。
「ああ・・・。忘れないよ・・。本当にありがとう。」
そしてそのまま振り向かずに進んで行った。多分、今まで竜の前では泣かずに我慢していた涙が一気に流れ出るだろうと思ったから・・・。
竜が奥野春奈にしてあげられる最後の優しさだった・・・。
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