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もう一度私を見て!
・・・・・真っ白な空間で・・・目を覚ました・・・・・。
ここはいったい・・・。
まだ意識がはっきりしない。ぼんやりとだが誰かが覗き込んでいる・・・。少しずつ焦点が合ってきた・・・。痛い・・・。頭が・・・。誰かが俺を呼んでいるような気がする・・・。ここは、いったいどこなんだ・・・。俺はいったい・・・。
竜は完全に目を覚ました。目の前で女の子が心配そうに覗き込んでいる。女の子は竜が目を覚ましたのを見て、慌ててナースコールを押した。白衣を着た人が男女二人でやってきた。
男の方が竜の体を診ている間、女が竜に、
「名前を教えてくれる?」
竜は首を振った・・・。女の子が心配そうに見ている。
「どこから来たのかわかる?」
竜はもう一度首を振った・・・。竜の体を診ていた男が、
「分からないのか?」
と、口を挟んだ。竜は頷いた・・・。横にいた女の子が泣きだしてしまった。男の人は女の人を見て首を振りながら、
「記憶喪失かもしれない・・・。体は何ともないが、頭をかなり強く打っている。」
と、言い立ち上がった。
「又、もう少し時間を空けてから診に来るよ。」
二人は部屋を出て行った。女の子は泣きながら、
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。」
と、謝っている。竜は女の子の手の上に自分の手を置いて、
「泣かないで、大丈夫だから。」
と言うと、女の子が竜の顔をじっと見つめる。竜は微笑んで見せた。女の子は安心したのか泣き止んだ。竜が、
「君は?」
と、問いかけると、女の子は、
「奥野 春奈。」
消え入るような声で言った。
竜は、
「春奈・・・。」
と、呟き、その名前が凄く愛おしいような懐かしいような気がした・・・。
それから春奈は、毎日竜の見舞いにやってきた。春奈の両親も何回か来た。
後で、竜は春奈の運転する車に跳ね飛ばされたんだと聞かされた。
竜は相変わらず何も思い出せないでいた。
春奈はいつも竜の世話を嬉しそうにしていた。竜もそんな春奈に優しく接していた。
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