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次の日も春奈は朝早くから竜の病院へと向かった。
思いつめた顔をしている。
「記憶が・・・。戻らなければいいのに・・・・・。」
ポツリとつぶやいた。
「なんで?」
竜が優しく聞いた。
「記憶が戻らなければずっと一緒に居られるでしょ?もし、戻ったら・・・。あなたはここから居なくなってしまう・・・。そして、私の事も忘れてしまいそうで怖いの・・・。好きなの!私、あなたの事が好きなの!!」
春奈は竜の胸の飛び込んだ。竜は春奈の事を包み込むように優しく抱きしめる・・・。竜は春奈の頭を撫でながら、
「馬鹿だなぁ~。忘れるわけないじゃないあ。俺がここまで元気になれたのは春奈のおかげなんだよ。」
春奈は竜の目をじっと見つめて、
「本当?」
「本当だよ。」
竜が優しく微笑む、春奈は竜の胸に顔をうずめながら、
「昨日、遅くにあなたが誰だかわかったの・・・。」
静かに確認するように言った・・・。
「そう・・・。」
春奈は顔を上げて、
「嬉しくないの!?」
と、聞いた。
「うん・・・。嬉しいような、怖いような・・・。まだ実感もないし正直よく分からないよ・・・。」
「もうすぐ、あなたを探している人達が来るわ・・・。お願い!!私から離れて行かないでね!!」
竜がもう一度春奈を強く抱きしめる。
ノックする音が聞こえた。春奈が下を向いたままドアを開けると、男が二人と女の人が二人入って来た。奥野 春奈は押し黙って竜の方を真剣なまなざしで見つめた。男の一人が、
「竜・・・。村田だ・・・。本当に覚えてないのか?」
おそるおそる聞いた。
竜はじっと見つめたまま・・・。
「はい・・・。」
と、答えた・・・。女の人がたまらず走り寄って来て、
「竜!私よ!麗華よっ!!分かるでしょ!?」
「すみません。」
麗華はその場に泣き崩れてしまった。竜が、
「泣かないで・・・。」
と、声を掛けるとますます泣き崩れた。あとの二人はそのまま立ち尽くしたままだった。
竜が春奈に向かって、
「春奈。」
と、呼びかける。後ろにいた女の人がびっくりして恐る恐る竜に近づこうとした。奥野 春奈はそれを押しのけて、
「なぁに?」と、言って竜の手を握りしめた・・・。後ろの女の子の顔が歪んだ・・・。
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