もう一度私を見て!

3/7
前へ
/17ページ
次へ
 次の日も春奈は朝早くから竜の病院へと向かった。 思いつめた顔をしている。 「記憶が・・・。戻らなければいいのに・・・・・。」 ポツリとつぶやいた。 「なんで?」 竜が優しく聞いた。 「記憶が戻らなければずっと一緒に居られるでしょ?もし、戻ったら・・・。あなたはここから居なくなってしまう・・・。そして、私の事も忘れてしまいそうで怖いの・・・。好きなの!私、あなたの事が好きなの!!」 春奈は竜の胸の飛び込んだ。竜は春奈の事を包み込むように優しく抱きしめる・・・。竜は春奈の頭を撫でながら、 「馬鹿だなぁ~。忘れるわけないじゃないあ。俺がここまで元気になれたのは春奈のおかげなんだよ。」 春奈は竜の目をじっと見つめて、 「本当?」 「本当だよ。」 竜が優しく微笑む、春奈は竜の胸に顔をうずめながら、 「昨日、遅くにあなたが誰だかわかったの・・・。」 静かに確認するように言った・・・。 「そう・・・。」 春奈は顔を上げて、 「嬉しくないの!?」 と、聞いた。 「うん・・・。嬉しいような、怖いような・・・。まだ実感もないし正直よく分からないよ・・・。」 「もうすぐ、あなたを探している人達が来るわ・・・。お願い!!私から離れて行かないでね!!」 竜がもう一度春奈を強く抱きしめる。  ノックする音が聞こえた。春奈が下を向いたままドアを開けると、男が二人と女の人が二人入って来た。奥野 春奈は押し黙って竜の方を真剣なまなざしで見つめた。男の一人が、 「竜・・・。村田だ・・・。本当に覚えてないのか?」 おそるおそる聞いた。 竜はじっと見つめたまま・・・。 「はい・・・。」 と、答えた・・・。女の人がたまらず走り寄って来て、 「竜!私よ!麗華よっ!!分かるでしょ!?」 「すみません。」 麗華はその場に泣き崩れてしまった。竜が、 「泣かないで・・・。」 と、声を掛けるとますます泣き崩れた。あとの二人はそのまま立ち尽くしたままだった。  竜が春奈に向かって、 「春奈。」 と、呼びかける。後ろにいた女の人がびっくりして恐る恐る竜に近づこうとした。奥野 春奈はそれを押しのけて、 「なぁに?」と、言って竜の手を握りしめた・・・。後ろの女の子の顔が歪んだ・・・。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加