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竜の目に、山崎 春奈の顔は映らなくなっていた。
もう一人の男がそれを見て女の子の腕を引っ張り竜の元へと連れてきて。竜の胸ぐらをつかんで、
「お前の春奈はこっちなんだよっ!!お前がずっと見てきた春奈はこの子なんだよっ!!目を覚ませよ!竜・・・。思い出してくれよ・・・。春奈の事だけでも・・・。」
と、言って竜の目をしっかり見つめる。竜がその春奈を見る・・・。その子はまるで天使のように見えた・・・。竜は・・・、
「天使・・・。」
と、消え入るようにつぶやいた。その瞬間、竜の胸は張り裂けそうになり、頭が割れるように痛くなり、竜はうなりながら頭を抱え込んだ。あ汗がダラダラと流れ落ちる。竜は奥野 春奈にしがみついた!奥野 春奈は皆に、特に春奈を憎しみの目で睨みつけながら、
「帰って!!帰って下さい!!この人を苦しめないで下さい!!ずっとずっと私が付いてるから!!私がずっと一緒にいるから!!帰って!!」
奥野 春奈は涙を浮かべながら竜を抱きしめた。男は、
「竜!!本当の自分を思い出せ!!」
竜がガタガタと震えだす・・・。そのまま、竜の意識は遠のいていった・・・。最後に奥野 春奈の泣き叫ぶような声で必死に何かを言っているような声だけが聞こえた・・・。
・・・・・本当の自分・・・・・その言葉だけがこだましていた・・・。
・・・・・真っ白な空間で目を覚ました・・・・・。
ここは・・・どこなんだろう・・・。まだ意識がはっきりしない。ぼんやりと誰かがいる。
だんだん焦点が定まってくる。誰かが俺を呼んでいる・・・。
竜は完全に目を覚ました。女の子が竜に向かって、
「大丈夫?」
「ああ・・・。」
女の子は竜の目をしっかり見つめて声を震わせながら、
「あなたの名前は?」
息を飲む・・・。
「和泉 竜。」
竜は不思議そうに、
「君は?」
と、聞いた。
女の子の顔が歪んだ・・・。そして目に涙をためながら・・・。
「奥野 春奈・・・。」
かすれる声で答えて、ぽろぽろと涙を流し始める・・・。
「忘れないって・・・言ったのに・・・。」
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