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ある日、私はインフルエンザで高熱を出し、寝込んでしまった。
この時は、なぜか頭痛がひどく、1人では何もできないような状態になっていた。
私は、メールで茜さんにインフルエンザで寝込んでいると連絡すると、茜さんが私のアパートまで来てくれて看病してくれた。
氷で頭を冷やしてくれたり、お茶を飲ませてくれたり、お粥を作って食べさせてくれたりと、ずっと私のそばで看病してくれた。
私は、頭がボーっとしたままの状態が続き、その日は、なかなか高熱がおさまらなかった。
茜さんは、夜中も私のそばで、ずっと看病してくれていたようだった。
翌日の朝、体が少し楽になったような感じがし、目をあけると茜さんが、
「おはよう!」
と声をかけてくれた。
私は、天井を見つめながら、過去のことを思い起こしていた。
記憶喪失で失った3年間の記憶が、徐々に蘇ってきていた。
何かの拍子に記憶が戻った場合、「記憶を失った期間の記憶」を記憶が戻った時に忘れてしまうということが多いらしいが、私の場合は、はっきり覚えていた。
私は、会社ではプロジェクトのリーダーとして、プロジェクトをまとめたり、社外の部品メーカーと交渉していたことを思い出した。
以前、久保製鋼の佐野さんが、私が久保製鋼の製品を購入する約束をしたと言われたが、私は、そんな約束をした覚えはなかった。
それどころか、久保製鋼の製品は、品質面で購入は難しいと答えたことを思い出した。
また、石川工業の井上さんからお金を渡されたとき、以前は受け取っていたと言われたが、これもまったく身に覚えがなかった。
私は、井上さんから何度かお金を渡されたが、その都度、丁重にお断りして、お金をお返ししていたことを思い出した。
このことを思い出した私は、この3年間の自分は、間違ったことをしていなかったと安堵した。
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