3人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらくお互いの事を話しながら電車の揺れに身を任せていた。
野崎はやはり仕事で品川に来ていたらしく、始発で戻るところだったらしい。
私は東北の田舎町の出身で、友達の紹介で彼と出会った事や、付き合って二年だとか、彼が元々横須賀の人だという事まで詳しく話をさせられた。
「……あ」
野崎が不意に顔をあげると電車の速度が落ち、ゆっくりと停車した。
「ここは?」
旅行初心者、下調べも無しに田舎を飛び出したオマヌケな私は、なんでも知っていそうな野崎に聞くしかない。
「ここで乗り換えれば、羽田へ行くぞ」
「え……」
乗り換えのある駅だからか、停車時間が長めだとアナウンスがあった。
「もし本当に、彼氏が浮気してたら?」
そんな事ない……って、はっきり言えたらいいのに。
「そんな現場をその目で見に行く事になるかもしれないんだぞ」
実際に見てしまうよりならここで引き返して、あとでメールか電話で話し合った方がいいのかもしれない。
「ケンカしたり、複雑な気持ちになるくらいなら、そういうやり方もアリだと思う」
「……それでも、顔を見て話をしたいです」
私のために。
最初のコメントを投稿しよう!