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羽田空港への乗り換えを通りすぎ、横浜も越えた。
私の手に握られた地図は早くもクタクタになってきていたが、目的地まであと半分程というところまで来たようだ。
「ずっと海沿いを行くんですね」
「退屈か?」
そう言った本人が退屈そうに、長い足を通路へ放り出し、窓際の手すりに頭を乗せて寝転んでいる。
「まさか。一人じゃないから退屈なんてしないです」
「景色関係ねぇし」
「旅行自体が初めてだから、楽しいですよ」
「一人じゃないから、も関係ねぇ」
野崎は私に言い返しながらも、眠いのか両方の瞼は落ちている。
もしかして疲れているんだろうか。
私が疲れさせてしまったのか。
なんだか申し訳ない事をしたような気になってきてしまった。
「ばぁか、何おとなしくしてんだよ」
片目を開け、私を見る瞳が笑っている。
「思ったより楽しませてもらってるよ、俺は……」
体を起こした野崎はぐんと伸びをした。
「……っ、安心しろ、最後までちゃんと付き合ってやるから」
アクビしながら言われてもね。
「メシ代が高かったなぁ」
……っ!
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