恋愛はただ座ってるだけじゃ、電車みたいにはたどり着かない。

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品川駅に着いたのは、まだ辺りが薄暗い朝早くだった。 突然思い立って旅行の支度をし、その日の夜に家を飛び出して、上りの電車に飛び乗った。 頭の中がもういっぱいで、何をカバンに詰めたのかよく覚えていない。とにかくお金と携帯電話があればなんとかなるとしか考えていなかった。 品川駅に着くまでは心地良い列車の揺れのおかげでゆっくりと睡眠はとれた。 電車からおりて広すぎる駅を迷いながら歩き、やっと見つけたインフォメーションで観光用の地図をもらった。太平洋に面した京急沿線のラインが、品川駅からマリンパークまで続いている。 「マリンパークまで行きたい、けど……」 地図を見ながら指で赤いラインをたどり、落胆する。電車で行けるみたいだけど、どのくらい時間がかかるのか。どのくらいお金がかかるのか。 ―――乗車賃。 財布の中身は、品川駅に着いた時点で帰りの電車賃しか残っていないのだった。いや、それも足りない。 旅行慣れしていないとか以前の問題で、下調べも何もせず、無計画に飛び出した結果だった。
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