恋愛はただ座ってるだけじゃ、電車みたいにはたどり着かない。

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離れた片手がベンチの背もたれにまわされ、まるで肩を組まれているようだ。近いんですけど。 「それと、俺はあんたみたいなオマヌケに手を出すほど女に飢えないし、相手は選ぶ。つまりナンパじゃない」 ムカつく単語ばかりを羅列する男だ。 でもそうだとしたら、この男はもしかしなくても私を助けてくれたのかな。 お礼を言うべきなのか悩んでいると、彼は長い足を組み、私の顔をじっと覗き込んできた。 「身の上話くらいなら聞いてやる余裕と喫茶店ならあるが、この辺は自殺の名所とかはないから、オススメの骨埋め場所は紹介してやれないぞ」 勝手に自殺志願者と決めつけないでいただきたい。 「違います、旅行です。ただの旅行……」 「今にも死にそうな顔してたけど?」 「それは、お腹すいてたからっ!」 「腹減って死にそうだったのか? そこに売店もカフェもあるのに?」 夜に家を飛び出してから、節約の為と睡魔のおかげで食事をしていなかった事を、今まで忘れてたのに思い出させられた。 「カフェや売店があっても、お金がないんですっ」 「……ぶはっ」 大笑いし出した男の隣で私は、泣きたくなった。
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