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注文したものを平らげて、食後に頼んでおいたコーヒーがテーブルに届く。
「旅行と言っていたな」
彼の指には少々不釣り合いな小さいコーヒーカップ。器用に持ち上げる仕草にしばし見惚れていた。
「どこまで行くんだ?」
「……油壺マリンパークまで」
「それはまた、長旅で」
濃いめのホットコーヒーをすすって口の中を全部苦くする。
テーブルに積み上がっていた食器は、店員さんがさげていった。端に置いてある請求書を見るのが怖い。
「なんで?」
男は二口でコーヒーを飲み干した。熱くないのかな。
「油壺のマリンパークに、彼氏がいるんです」
遠距離だけど、付き合ってる。
毎日メールして、電話して。
会いたいなって言うと、彼も頷いていた。
でも、横須賀にいる友達に、彼が女の子とデートしてるところを見たと教えられたのだ。
信じたくなかったけど、疑う事も出来ずに、こうして思い立ってしまったのだ。
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