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無謀すぎるし、我ながら無茶だよねと呆れる。
「連れてってやるよ」
自分から聞いておいてたいして興味なさそうだったくせに、男の口からはそんな言葉が飛び出した。
耳を疑う私を横目に、食事の請求書を手に取ると、さっさと会計へ向かっていく。
ついていけない……じゃなくて、会計!
「私の分……」
「一括で。領収書も頼む」
財布を出す前にカードで支払いを終えてしまった。領収書を受け取った男は、こちらを振り向きニヤリと笑う。
「安心しろ、きちんと請求してやるから」
ひらひら揺れる領収書がこんなにも憎いものか……!
「行き先が決まってるなら行動は早い方がいい。行くぞ」
さっさとカフェを出て改札の窓口で切符を買っている男を追いかける。
「ちょっと、まさかあなたも行くの?」
「俺が行かなきゃ……あんた金無いだろ?」
図星を突かれ押し黙る私に、男はカフェの領収書とあわせて二枚の紙をひらつかせた。
「切符代もきちんと請求してやるから、安心しろ」
安心できるかっ!
「お、タイミングいいな。来たぞ」
「嘘でしょ……」
まさか初対面の男と二人旅になるなんて、思いもしなかった。
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