VII

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今日も朝から蒸し暑い。 海を見に行こうと突然言い出した一範に 連れられて、ドライブに来た。 「茹だるような暑さだ。 久美の気分がすっきりするかなって思ったけど これじゃ逆効果だよな」 車から降りた一範は不快そうに空を見上げて言った。 久美は一範を見て笑顔で首を横に振った。 久しぶりに会えた一範は相変わらず優しい。 この時期は、一範も仕事が忙しくて 疲れている筈。 なのに…… 私を元気づける為にドライブに誘ってくれたんだ。 折角の休日。 楽しい一日にしなくちゃ。 久美はサンダルを脱ぐと 片方の手でサンダルを持ち砂浜を歩き出す。 海の水が冷たくて心地いい。 川崎さんの遺体が見つかった。 そこから始まった捜査。 三日前に少年が病院に運ばれていた。 警察が川崎さんと少年の事故を結びつけるのは当然の事。 川崎さんは きっと少年にあの機械を使って復讐をしたんだ。 それでも、足りなかった。 きっと、目を覚ました少年を川崎さんは 殴りつけて…… 久美は慌てて頭を振る。 もう今日は、考えるのはよそう。 「近くに美味しいカレーの店があるんだ。 景色も綺麗だから 寄って行こうか!」 一範の言葉に久美は笑顔で頷いた。
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