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「まぁ、そんな怖い顔せんと、あんたもこれ食うか?」
ズボンのポケットから棒つきのキャンディを取り出し、私の方に向けた。
「いらんの? 飴ちゃん?」
黙ったままの私に男が笑いながら近づいてくる。
がりっという音が響く。
男が口の中のキャンディを噛み砕いている音――
ガリガリと音をさせながら、男が「ほら」と言い、キャンディを手渡そうとしてきた。
その男を無視して横を通り抜けようと動いた時――
「待ちぃや」
低くドスの効いた声とともに、首筋に何かがあてがわれる。
折り畳み式の警棒――。
男に視線をあわせる。
「どこ、行くんや?」
ニヤニヤと笑っている男の顔――。
けれども、目は全く笑っていない。
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