act.2 火蜥蜴~サラマンダー~

8/26

52人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「どうでしょうか、彼女? お気に召されましたか?」 ぐるぐると思考している私の耳に、佐多の声が届く。 「ああ、気に入ったよ」 男が私の顎を掴んだ。 優しげな微笑み――。 一見すれば、どこにもおかしなところなんて見られない。 むしろ、この微笑みで落ちた女も多かったに違いない。 けれど――。 この男の目――。 男の目が狂気をはらんで、ギラギラしているのがわかる。 獲物を――私をどうなぶってやろうか――そればかり考えて、私を値踏みしているのがわかる。 辟易する――。 こぼれそうになるため息を抑え、男に微笑んでやる。 男も満足そうに笑った。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加