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「どうでしょうか、彼女? お気に召されましたか?」
ぐるぐると思考している私の耳に、佐多の声が届く。
「ああ、気に入ったよ」
男が私の顎を掴んだ。
優しげな微笑み――。
一見すれば、どこにもおかしなところなんて見られない。
むしろ、この微笑みで落ちた女も多かったに違いない。
けれど――。
この男の目――。
男の目が狂気をはらんで、ギラギラしているのがわかる。
獲物を――私をどうなぶってやろうか――そればかり考えて、私を値踏みしているのがわかる。
辟易する――。
こぼれそうになるため息を抑え、男に微笑んでやる。
男も満足そうに笑った。
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