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「待て」
「何? ちゃんと帰ってきたんだから文句はないんでしょ?」
呼び止められ、鬱陶しそうにそう答えれば。
「車に早く乗れ。送ってやる」
「あんた、バカじゃないの?」
嘲笑いながら、佐多を睨み付ける。
「あんたの顔見るのが嫌だから、歩いて帰るって言ってんの」
そのまま、佐多を無視して歩き出した時――
佐多が私の腕を掴んだ。
「離して!!」
振りほどこうと腕を振り上げる。
ふわり、と。
柔らかい何かが肩にかけられた。
「夜風が冷たい。傷にさわる」
それは佐多が着ていたスーツ。
優しく包み込むように私の肩にかけ。
「……何もないよりはマシだろ」
それだけ言うと、車に乗り込んだ。
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