act.4 居酒屋 八千代

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それをハンガーにかけようとして、手が止まる。 手にしているスーツを胸に抱く。 微かに―― 煙草の香りがした。 わかっている――。 わかっているのに―― 優しい言葉は私を逃がさないため。 それでも―― その優しい言葉が欲しくて、求めて――与えてくれれば震えるほどに嬉しくて――。 あの男も私も最低だ……。 佐多のスーツに涙が落ち、染みとなって消えて行った――。
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