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「……なっちゃん?」
私の声に気づいた女性――千冬さんがこちらを振り返り、驚いたような表情を見せた。
「……ただいま」
照れたように笑いながらそう言うと、千冬さんがあわてて駆け寄ってきた。
「なっちゃん!! あんた、その怪我……!!」
「ちょっと……ヘマして……」
笑いながら千冬さんに答えると、千冬さんが私を支えながら、店の中に声をかけた。
「やっくん!! やっくぅぅん!! ちょっと、来て!! 早く!! 早く来て!! 魚捌いてる場合じゃない!!」
「なんなの、ちーちゃん。お店の前で騒がしい。お客様が逃げちゃうでしょ?」
お店の中から呆れたように言いながら、一人の男性が出てくる。
少し薄くなった頭に人の良さそうな顔――。
「八雲さん……。ただいま……」
出てきた男性に笑いかける。
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