78人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
――ホンマにいけすかんオッサンやな……。
毒づきたくなる気持ちを押さえ、海を見る。
深夜の埠頭――
遠くに見える観覧車のイルミネーションが闇色の海にキラキラと瞬いている。
夜の潮風が頬をかすめて、髪を揺らす。
――せめて一緒にいるのが蜥蜴ちゃんならな……。てか、蜥蜴ちゃんなら大歓迎や。
――ホント、兄貴らの言い付けとはいえ、何でこんなオッサンの相手せなアカンねん……。
嫌悪感を隠すのも面倒で、これみよがしにため息を吐くと、向こうも“それ”を感じとったのか、不機嫌そうに俺を睨んだ。
「で? わざわざ八雲に仲介させてまで俺に会いたい理由はなんだ?」
「ん? ああ……。兄貴たちからの伝言っすよ。“商売するのは勝手だけど、もうちょい控えめに”ですって、佐多さん」
ふざけたように、そう言うと、佐多がチラッとこちらを見て、小馬鹿にするように笑った。
最初のコメントを投稿しよう!