act.9 愛囚

2/22
前へ
/22ページ
次へ
「……なぁに?」 「……別に」 佐和さんの惣菜屋にて――。 黄昏時の迫るいつもの時間――。 いつものように、彼――東野遥汰は店にやって来て――。 いつものように、いくつか惣菜を買って――。 いつもの優しい時間――。 ただ、少しだけ違うのは……。 「もう……。さっきから人の顔を見ながらニヤニヤして……。なんなの? いったい?」 「……つけてくれてるんだ、それ」 遥汰が嬉しそうに笑いながら、指をさす。 「あ、これ……」 遥汰から貰ったペンダント――。 鎖の部分をそっとさわりながら、遥汰の方を見る。 「今日で一週間目だ」 「え!? 数えてるの!? 日数!?」 「うん、だってさ、嬉しいじゃん。そうやって、ずっとつけてくれてるの見ると。プレゼントしたかいがあったなぁって……」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加