act.11 kiss

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「……答えろよ」 呟くような、哀しそうなその声に引かれるようにして―― 「……なくした」 うつむいたまま、そう答えると、遥汰が微かに笑った。 「……もしかして、俺のこと……迷惑だった?」 「違っ……」 あわてて顔を上げ、答えようとする私を遮るように、遥汰がゆっくりと動いた。 「ごめん、なずなさん、優しいから……気を遣って、俺に断れなかったんだよね。ごめん……。もう……付きまとわないから」 それだけ言うと、私の顔を見もせず、すれ違って行った。 違うと言いかけて。 言葉を飲み込む。 今さら……彼になんと言えばいいのか。 彼を傷つけておきながら、弁解して、許して欲しいと。 そんな都合の良いこと許されるわけがない……。 私は、ただ、彼の背中を見ることしか出来なかった――。
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