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「はぁ~い」
同じように、少しおどけながら、佐和さんに返事をした。
「じゃ、佐和さん。これ……。花柄のこれ、借りて帰りますね」
そう言ってお店の外に出た。
傘をさし、ゆっくりと歩き出す。
雨足が少しずつ強くなってきているようだった。
――佐和さんから傘を借りて正解だったかも……。
そんなことを思いながら、黄昏時の雨の町を歩いて行く。
その時だ――。
鞄の中に入れてあるスマホから着信を告げる音が響いた。
――佐和さんからかもしれない。仕事の件か、忘れ物でもしたのか……。
そう思って、着信履歴を見て身体が固まった。
『東野遥汰』――。
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