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「会いたい」
遥汰の声が――耳に優しく響く。
「会いたい、貴女に……すごく会いたい」
「ねえ……」
震える声で、遥汰に問いかける。
「遥汰君……今、どこにいるの?」
「……八千代の近く」
その言葉を聞いた瞬間――
私は走り出していた。
水しぶきがはねあがり、ズボンが濡れる。
でも、そんなこと気にならなかった。
会いたい――。
ただ、ただ――
遥汰に会いたくて、走り続ける。
八千代の近くに来た辺りで、遥汰の姿を探しながら、それでも、私は走り続ける。
視界に――
見慣れた姿が入った。
「遥汰君!!」
傘を放り投げ、彼の元に走り込む。
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