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いつもの時間が近づいてくる。
黄昏時の迫る小さな惣菜屋。
せわしなく動く佐和さんの頼みを聞きながら、お客をさばいていく。
お客の流れが一段落ついて止まる。
惣菜の入っていたケースを拭きながら、小さなため息を吐いた。
お客がたくさんいる時なら、彼をうまく避けることができたかもしれないのに……。
そう思うのとほぼ同時だった。
カチャンという軽い音。
折り畳み式の自転車を惣菜屋の横に停め、笑顔で近づいてくる彼――
遥汰――。
胸が締め付けられるように痛くなる。
彼に――言わなければいけない。
もう――会うのはよそうと……。
お店にくるのはかまわないけど、あくまでも客と店員の関係なんだと。
貴方と私は――それ以上のものを求めてはいけないのだと――。
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