act.11 kiss

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いつもの時間が近づいてくる。 黄昏時の迫る小さな惣菜屋。 せわしなく動く佐和さんの頼みを聞きながら、お客をさばいていく。 お客の流れが一段落ついて止まる。 惣菜の入っていたケースを拭きながら、小さなため息を吐いた。 お客がたくさんいる時なら、彼をうまく避けることができたかもしれないのに……。 そう思うのとほぼ同時だった。 カチャンという軽い音。 折り畳み式の自転車を惣菜屋の横に停め、笑顔で近づいてくる彼―― 遥汰――。 胸が締め付けられるように痛くなる。 彼に――言わなければいけない。 もう――会うのはよそうと……。 お店にくるのはかまわないけど、あくまでも客と店員の関係なんだと。 貴方と私は――それ以上のものを求めてはいけないのだと――。
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