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「なずなさん」
彼の笑顔を見ながら、身体が震える。
お願いだから……そんな風に笑いかけないで……。
私に優しく笑いかけないで……。
辛くなるから……。
「……なずなさん? どうしたの?」
どうして彼は――
私のほんの些細な感情の動きを見破ってしまうのだろう。
心配そうに私の顔を見つめる彼を見ると、決心が鈍る。
けれども、やはり決着はつけなければならない。
先伸ばしすればするほど――辛くなる。
かえって良かったんだと。
お客のいない、落ち着いた時で良かったんだと、自分を納得させる。
なぁなぁにして、彼と決別できないまま、私の“闇”に彼を巻き込むぐらいなら、ここで決別するべきなのだ。
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