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優しい響きを持ったその言葉に、ハッとなり、佐多の顔を見る。
佐多の表情は悲哀に満ちていて――
心の底から私のことを案じているようなその表情に、心が乱れる。
どうして、そんな顔をする?
私は貴方にとって、たくさんいる飼い犬のうちの一匹で、役に立たなくなれば、容赦なく捨てられる存在で――
なのに、なぜ、そんな顔をするの?
私の視線から逃れるようにして、佐多が顔を背けた。
「行くぞ。蜥蜴」
顔を背けたまま、私に素っ気なく言い放ち、腕を掴んで、そのまま歩き出そうとしたその時――。
「……待てよ」
佐多の動きが止まる。
遥汰が佐多を睨み付けながら、ゆっくりと佐多に近づいてきた。
「貴方……俺がなずなさんのこと……何も知らないって言ったよね? じゃあ、逆に聞くけど、貴方はなずなさんの何を知ってるの?」
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