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遥汰の前に立ちはだかった人物の顔を見て、凍りつく。
佐多――。
「え……。あの……」
目の前にいる佐多に不審なものを感じたのか、戸惑いを隠しきれない遥汰が声をかけた。
そんな遥汰をチラッと一瞥し、そのまま、佐多は私の方に近づいてきた。
背中に冷たいものが走る。
「蜥蜴……」
それは――
その声は――
まるで恋人に語るかのように、優しい響きを持っていて――。
見えない鎖に絡めとられるように――
私の身体を縛りつける――甘い囁き。
「……蜥蜴」
もう一度、甘く名前を呼ばれ、私がそれに答えようとした時だ。
ヒュッという空気を切る音と同時にバシッという音が耳の奥で響き、頬に衝撃が走った。
「なずなさん!?」
遥汰が駆け寄り、倒れかかった私の身体を受け止め、支える。
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