act.16 狂犬の哀

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「つか、言ってる場合やないわ、蜥蜴ちゃん」 人のことは棚上げにして、カイトが私の言葉を遮った。 「こいつら……囲むつもりや……」 カイトに言われて、周りの気配を素早く探る。 右に二人――左に一人――いや、こちらも二人――。 「先手必勝、いきましょか!!」 カイトが呟きながら、私の身体を離し―― 「俺、左の二人行くから、蜥蜴ちゃん、あんたは右。頼むわ!!」 言いながら、カイトは既に行動に移っていた。 ふわりと浮くように跳躍し、そのまま強烈な蹴りをお見舞いしている。 やっぱり、綺麗な体術だと―― カイトの流れるような動きを横目に私も動く。 ソファーの背もたれに手をかけ、反動をつけながら、近づいて来ている男の頸椎を蹴りあげた。 呻き声をあげながら、倒れる男の顎にも、蹴りを叩きつけてやる。
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