act.16 狂犬の哀

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もう一人の男が銃を懐から取りだし、構える隙を狙い、男の手首を掴む。 そのまま、手首を捻り、男を投げ飛ばす。 派手な音をさせながら、男は部屋の調度品の花瓶にぶつかり、ぐったりとなった。 「……ハデに決めてんな、蜥蜴ちゃん」 茶化すような声に振り返って見ると、カイトの方も男たちを片付けた後のようで、男の頭に足を置き、踏みつけながら、ニヤニヤと笑っていた。 「お互い様でしょ?」 言いながら、カイトに近づき、ふと、あることに気がつく。 カイトの顔色が悪い。 心なしか、その表情もどこか硬い。 ニヤニヤと笑っているカイトの手を見る。 「あんた、その手で押さえてるとこ……」 カイトの左手の指の隙間から、血が流れてきている。 見られまいと、押さえている脇腹から流れてきているのは明白で――
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