act.16 狂犬の哀

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「なっ!! 怖いことなんかあるかい!!」 「震えてるくせに」 「これは……武者震いじゃ!!」 「やっぱり震えてるんじゃない」 苦笑して、カイトの右腕を取り、支えるようにして、自分の肩に回す。 「いいの、怖いのはわかるから」 「だから、怖ないって……」 「私は怖いわよ」 再び、カイトの言葉に被せるようにして、言葉を続ける。 「怖くて仕方ない。依頼が来て、佐多に言われて、実行して……。その間、怖くて怖くて仕方ない。泣きながら、座り込んだら許してくれるかしらとか、途中で逃げたらどうなるかしらとかそんなことばかり考えてる」 黙って聞いているカイトに―― 「当たり前じゃない」と笑う。 「人を傷つけるだけと……人の命を奪うのとでは、天と地ほどの差があるんだから……。怖いに決まってるじゃない」
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