act.16 狂犬の哀

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次々に男たちが倒れ付し、その中で、私はゆっくりと呼吸をして、意識を一点に集中させる。 落ち着け――。そして考えろ。 生き延びる為に――この窮地をどうやって逃げ延びるか―― 冷静に考えるんだ――。 ここに来る前に、佐多から与えられた情報を素早く自分の中で反芻させる。 標的のこと――。標的に関わる人物や情報――。周辺の見取り図――。 そうして――あることを思い付く。 一か八か……。これしかない……。 カイトの体力と精神力に賭けるしかない……。 気合いを入れるようにして、カイトの方へ、足を踏み出す。 ソファーの後ろで、カイトは寄りかかるようにして座っていた。 「蜥蜴ちゃん……。かっこええなぁ……。惚れてまいそう……」 力なく笑いながら、カイトが軽口を叩いてきた。
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