act.16 狂犬の哀

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カイトの言葉を無視して、カイトに聞く。 「立てる? 立てなくても立ってもらうけど」 「なに、その容赦ないの……」 力なく笑うカイトの腕を自分の肩に再び回し、支えるようにして、立ち上がらせる。 「蜥蜴ちゃん……」 カイトが笑いながら、私に話しかけてきた。 「さっき……怖い言うてたやん? 蜥蜴ちゃん?」 “俺もやねん” それは――まるで泣いているような――頼りなげな声で―― 「いつでも……いつだって……怖くてたまらんねん」 「けどな……」と―― 泣くような声でカイトは続ける。 「俺には“これ”しか取り柄がないねん……。“ここ”しか居場所がないねん……。だから……」 「わかってる……。わかってるから……」 彼は私の敵なのだから―― 見捨てればいい――。 見捨ててしまえばいいのに――。 カイトもそう言ってたのだから、見捨てて逃げればいいのに――
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