act.16 狂犬の哀

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なのに、それが出来ない理由が――わかったような気がした。 彼と私は……似ているのだ……。 闇が怖くて仕方ないのに、闇の中だけが――自分の居場所――。 誰にもなつかない癖に―― 誰かに寄りかかり、頼りたくて仕方ない…… 狂犬の哀しさ……。 「わかってる……。わかってるから……大丈夫……」 何が大丈夫なのか――。 言っている自分が一番わからない。 けど、言わなければいけないような気がして、「大丈夫だから」とカイトに言いながら、寝室の方に向かった。 倒れている標的とボディーガードたちを尻目にしながら、ベッドのシーツを勢いよく剥ぎ、カイトをベッドの上に横たわらせる。 シーツを切り裂き―― 「手、ちょっとだけどけて。応急措置するから」 と言いながら、カイトの腹に切り裂いたシーツを巻いていく。
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