act.16 狂犬の哀

2/34
前へ
/34ページ
次へ
最初、何が起こったのか――。 把握できなかった。 それでも、後ろ手に縛られた身体を必死に起こし。 散々、なぶられて弄ばれ、火照り、ぼんやりとした意識を奮い立たせ。 なんとか状況を把握する。 わかったのは、敵のはずのカイトが、私の標的に手をだし―― 女たちの悲鳴を聞き付けて、乱入してきた――隣の部屋に待機していたボディーガードたちと対峙していることだけだった。 「あー……そら、そうなるわな。来るのは当たり前やな……」 どこか嬉しそうなカイトの呟きと、ボディーガードたちが動いたのは、ほぼ同時だった。 ボディーガードたちが拳銃を構え、カイトを撃ち抜こうと動く。 その動きにあわせて、カイトが腰から、折り畳み式の警棒を引き抜き―― 空を切るような音と共に、警棒が生き物のように、唸りを上げた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加