act.16 狂犬の哀

4/34
前へ
/34ページ
次へ
「ほい、いっちょあがり」 軽口を叩きながら、男たちを見下ろす。 流れるようなカイトの動きに、呆気にとられ、見つめることしかできない。 敵のはずの男なのに―― 一切の無駄を省いたような―― まるで演舞のような、体術に―― 気がつけば、見惚れてしまっていた。 カイトがクルリと振り返る。 「なんや、俺のかっこよさに惚れたんか?」 「なっ!?」 見惚れていたことを見透かされたように、カイトが私を見下ろし、ニヤニヤと笑っている。 「何を言ってんのよ!! それより、早く、縄をほどいて!!」 このままではマズイ。 すぐに見張りの連中がここにくるだろう。 まずは自由にならなければ……。 このままでは、何もできないまま、最悪のパターンを迎えることになる。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加